副鼻腔炎

副鼻腔炎の原因

 副鼻腔炎には「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」があります。多くの場合、急性副鼻腔炎は風邪のウイルス感染後に続く細菌感染によって起きます。顔面打撲などの外傷や齲歯(虫歯)が原因の急性副鼻腔炎もあります。
慢性副鼻腔炎とは昔で言う「蓄膿症」のことで、急性副鼻腔炎に対して治療を十分に受けなかったり、あるいは鼻症状があるのをそのままにしておいたりしたために鼻の奥の炎症が慢性化した状態です。副鼻腔と呼ばれる空洞の粘膜が腫れ、内部に膿が溜まります。また、鼻茸(ポリープ)ができる事もあります。
アレルギー性鼻炎や花粉症を持っている人はウイルスや細菌が入ってきたときに炎症を起こしやすく、副鼻腔炎にかかりやすい徴候があります。またここ数年はコロナウイルスに感染して、その後遺症としての副鼻腔炎が見つかるケースも増えています。
喫煙をする人はタバコの影響によって鼻の粘膜が弱くなり、細菌感染を起こしやすく副鼻腔炎になりやすい傾向にあります。

副鼻腔炎の病態

 副鼻腔とは頭部(顔面)の骨の中で、両頬の所、おでこの部分、目と目の間にある空洞を言います。この空洞は通常鼻腔と細いトンネル(自然口)で通じており、空気で満たされています。そのため正常であればX線写真(レントゲン)で撮影すると黒く透けて写ります。しかし、細菌などの侵入により炎症を起こすと鼻腔とのトンネルが閉塞し、溜まった濃が出てこなくなります。これがX線写真では白く濁って写ります。
 副鼻腔炎の主な症状として、頭痛・頭重感を伴う粘稠な鼻水・鼻づまり・後鼻漏(鼻汁が喉に流れる)・またそれらに伴って咳や痰がみられます。急性期には嫌な臭いを伴う膿性の鼻漏が自覚される事もあります。症状が悪化すると歯痛や頬部痛、鼻づまりにより嗅覚低下(物の匂いがわかりにくい)などでてきます。このような症状が出始めたときは診察と検査を行い、副鼻腔の状態を確認します。嗅覚低下を合併するときは匂いの神経に問題が無いか、そのための検査も追加します

副鼻腔炎の治療

 基本は局所療法と薬物療法になります。局所療法とは鼻腔や副鼻腔に直接的な処置をする療法です。鼻の中に溜まっている鼻漏を吸引し、薬剤をスプレーして鼻の通りをよくします。さらにネブライザーという吸入機器で鼻腔に薬剤を吸入します。
 また薬物療法として、抗生物質、消炎鎮痛剤、去痰剤などの薬を内服します。アレルギー性鼻炎のある人は抗アレルギー剤も内服します。初めはやや強めの内服を使用しながら状態を見つつ、徐々に効果が弱いけれど長期に服用できる薬へと切り替えて内服します。急性期では2,3週間の治療でほぼ症状が無くなる症例が多いですが、重症の場合は2,3ヶ月通院が必要なこともあります。症状が残っている場合は根気よく通院することが重要です。
 急性の副鼻腔炎で頭痛や顔面痛、歯痛が強いケースや、妊娠中で強い薬が使えない場合は副鼻腔を直接洗浄して内部に溜まっている膿を排出させ、さらに薬液を注入する特別な処置を行うこともあります。
 これらの治療で多くの副鼻腔炎は良好な経過をたどりますが、受診まで数ヶ月もしくは数年経っているケース、あるいは強いアレルギー性鼻炎や喘息を合併しているケースでは症状が改善しない場合があります。その場合は手術治療が必要になりますので、CT等の検査を受けてもらい、手術可能な病院に紹介状を書きます。
 特殊な副鼻腔炎として「好酸球性副鼻腔炎」という難治性の疾患があります。アトピー性皮膚炎や気管支喘息を基礎に持つアレルギー体質が強い方に起きる副鼻腔炎で一般的な薬に反応しづらく、手術を受けても再発しやすいのが特徴です。いろいろな検査(採血や、CT検査など)で難治性の好酸球性副鼻腔炎と診断された場合は特殊な注射薬で治療を行います。免疫系に作用し、過剰なアレルギー反応を抑える薬で半年ほど使用することで手術とほぼ同等の効果が期待できます。ただし、高価な薬剤なので診断を確定させた上で、治療方針をよく相談する必要があります。

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