当院で行える診療・検査・処置
耳の診察と検査
耳の診察は通常の椅子に座っての診察に加え、当院では診察・処置・手術用顕微鏡を備えており、ベッド上でより詳しい耳の診察をすることができます。
1. 標準純音聴力検査
音がどれくらい聞こえているかの基本的な検査で、音の高さごとに聴力(聞こえの)レベルを計測します。小さなお子さんでも聞き分けが良ければ5歳ぐらいから検査することが可能です。また当院では簡易型の防音ボックスでは無く、専用の設計・施工による防音室を備えており、待合室や診察室の雑音の影響を受けずに測定可能になっています。防音室はバリアフリー設計で車椅子ごと検査室内に入ることができます。
2. 耳鳴検査
いわゆる耳鳴りがどれくらいの周波数(音の高さ)で、音圧(音の強さ)で感じているかを検査します。
3. チンパノメトリー、耳小骨筋反射検査
これは鼓膜の動きを調べることにより、中耳炎有無やその程度、鼓膜への神経が正常に働いているかどうかを調べるものです。「顔面神経麻痺」という片側の顔面の筋肉の動きが鈍くなる病気では鼓膜の動きにも影響が出ますので、神経麻痺の度合いを調べる時にも用います。
4. 耳管機能検査
鼓膜の奥に「中耳」または「鼓室」と呼ばれる音を伝えていくための部屋(空洞)があります。その空洞と鼻の突き当たり(鼻からのどに降りる部位)は細い管でつながっており、これを「耳管」と呼びます。耳管の働きが悪くなると、高いところに上ったり、飛行機に乗ったりした際に耳が痛くなったり、聞こえが悪くなったりします。この耳管の働きが正常かどうかを専用の機械で調べます。
鼻の診察と検査
1. 鼻汁好酸球検査
アレルギー性鼻炎や花粉症があると、鼻汁の中に好酸球という成分が増えてきます。鼻症状がアレルギー性のものか、あるいは感冒などによる一時的なものかを簡単に区別する時に調べる検査です。
2. 顔面X線(レントゲン)検査
鼻閉(鼻づまり)や鼻汁が強い時、アレルギー性鼻炎のような体質に関係するものか、副鼻腔炎(昔で言う蓄膿症)のような感染によるものか、あるいはそれらが合併した状態かを区別する必要があります。当院ではデジタル方式のX線(レントゲン)検査装置を設置しており、少ない放射線被ばく量かつ短時間で鼻やその周囲の状態を調べることが可能です。
3. アレルゲン(抗原)検査
アレルギー性鼻炎や花粉症においては、その原因となる物質が何なのか調べておくことが重要です。アレルギー性鼻炎の治療の基本が抗原(アレルギーの原因物質)から遠ざかることにあるからです。当院では皮膚へのパッチ貼付や注射では無く、採血することでアレルゲン(=抗原:原因物質)を特定しています。1回の検査で約2~5mlの血液を採り、検査会社に提出します。約1週間で結果が判明し、ご説明できます。
4. 嗅覚検査
「匂いが分からない」と言った訴えで受診される場合、匂いを感じる神経がどこまで機能を残しているかが重要です。当院では「静脈性嗅覚検査」と言う、薬剤を注射して嗅覚神経がどの程度保たれているかを測定する方法で判定しています。
のどの診察と検査
1. 咽頭・喉頭X線検査
小児では「アデノイド」と呼ばれる扁桃腺の一種が肥大して、慢性的な鼻づまりやいびきの原因となることがあります。かなり大きくなる場合は呼吸に支障を来すこともあり、手術が必要です。鼻のX線(レントゲン)検査と同様に、このアデノイドについても写真を撮って確認します。
2. 内視鏡(ファイバー)検査
のど(咽頭や喉頭)の診察では肉眼による観察に加えて、内視鏡(鼻腔・喉頭ファイバー)検査が必要なことがあります。内視鏡は鼻から挿入し、咽頭・喉頭や気管の上方、食堂の入り口付近まで観察します。魚骨などの異物を飲み込んでしまった場合の診察や摘出も内視鏡を使って行うことがたびたびあります。
※当院では内視鏡の洗浄・消毒には胃腸科や消化器科でも使われている”オゾン水を用いた内視鏡洗浄機”を設置しています。一般的に耳鼻咽喉科診療所では内視鏡は水洗いと薬液に浸すことで消毒を行うところが多いのですが、オゾン水による洗浄・消毒でより高度に内視鏡を原因とする汚染・感染の予防を徹底しています。
3. 細菌・ウイルス等の検査
咽頭痛や発熱は原因が様々です。当院では以下の検査項目について検査キットを常備しています。溶連菌、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルス。また、ある程度の年齢以上であれば、扁桃などに付着している細菌については医師会の検査センターに委託して原因菌の同定を行うことも可能です。
4. いびき・睡眠時無呼吸症候群に対する検査
重度のいびきは睡眠障害を来たし、昼間の傾眠や、心臓・血圧などへの影響が出てきます。診察を受けていただいた上で、睡眠時のいびきの状態(頻度、大きさなど)や呼吸や循環器の状態について調べます。。以前は入院での検査が必要でしたが、検査機器の小型化や高性能化が進み、自宅での検査が可能になりました。提携している会社を通して検査機器を自宅に送りますので、一晩計測してもらうことで上記のデータを取ります(必要な場合は担当者が自宅に出向いて装着の詳しい説明を行います)。データの解析が出来ましたら、再診の際に詳しい説明を行います。さらに詳細な検査が必要な場合は精密検査を計画したり、あるいは大学病院に紹介して入院での検査を手配します。
めまいの診察と検査
1. 平衡機能検査(単純)
診察に伴って行う検査でフレンツェル眼鏡という器具などを用いた、簡単なめまいの検査です。めまいで生じる”眼振”(異常な目の動き)を観察します。
2. 頭位・頭位変換眼振検査
めまいの中で比較的多いのが「良性発作性頭位眩暈症」と呼ばれる疾患で、横になっている状態から起き上がったり、寝返りを打ったりすると激しいめまいが起きます。この状態を再現するために、赤外線CCDカメラという特殊な検査機器を装着してもらい、眼振(めまいに伴う異常眼球運動)の検査を行います。
3. 重心動揺計検査
めまいやふらつきがある場合、起立した状態で身体を真っ直ぐ保つことができないことがあります。身体の重心をどの程度保っていられるかを、重心動揺計というコンピュータに接続した専用の装置を用いて検査・解析します。めまいの鑑別(どのような病気から起こっているか)に用いるほか、同じ人のめまいがどの程度改善もしくは悪化したかを調べるのにも有用です。
耳の処置と手術
1. 耳垢栓塞除去
外耳道に耳垢が詰まった状態を耳垢栓塞と言いますが、自宅で取れないような耳垢では難聴を来すこともあります。耳垢を柔らかくする薬を使ったり、専用の器具を用いたりして耳垢を取り除きます。
2. 鼓室洗浄
急性中耳炎や慢性中耳炎で耳漏(耳だれ)が出ているような状態、または中耳炎での処置を行ったあとに処置を行います。これも処置・手術用の顕微鏡を用いて細かい部分まで処置や洗浄、薬液の注入を行います。
3. 鼓膜切開術
幼小児においては急性中耳炎により高熱が出たり、機嫌が悪くなる、夜泣きして寝ないなどのいろいろな症状が出てきます。軽い中耳炎では内服薬のみで治ることもありますが、鼓室と呼ばれる部分に膿が溜まると鼓膜に小さな穴を開けて排出させる必要があります。鼓膜表面に麻酔液を浸した小さな綿を置き、一定時間後に顕微鏡で確認しながら鼓膜の一部を切開し、排膿させます。
4. 鼓膜チューブ挿入術
上記の鼓膜切開術や投薬治療を継続しても中耳炎が軽快しない場合、切開した鼓膜に小さなチューブを挿入します。炎症を起こしている中耳(鼓室)との換気を良くし、膿が溜まっても切開せずに排出する目的で、鼓膜切開術と同時に外来で行います。当院では可能な限り乳幼児でも局所麻酔で行いますので、入院なしの日帰りで可能です。
鼻の処置と手術、特殊な治療
1. 鼻処置とネブライザー
軽症のアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)では鼻の吸引処置や薬剤の噴霧、そしてネブライザーと呼ばれる薬液の吸入による処置を行います。症状によって薬液を変更し、内服治療の手助けをします。
2. 鼻出血処置・焼灼術
短時間で止まる鼻出血は問題ありませんが、毎日続く場合や時間が長い(10分以上の鼻血)は要注意です。出血部位を固めるための薬剤を塗布したり、血管が切れて出血している場合は電気メスを用いて焼灼(露出している血管を焼き固める)したりします。
3. 副鼻腔穿刺・洗浄
抗生物質などの薬が高い効果を持つようになり、副鼻腔炎(蓄膿症)は内服薬の治療が主体となりました。しかし、内服治療にもかかわらず強い頭痛や顔面痛、歯の痛みなどで受診されるケースや、また妊娠中や授乳中の女性では強い薬が使えないことがあります。そういった場合は鼻の中から副鼻腔に細い針を刺し、溜まっている多量の膿を排出させる処置を行います。非常に古典的な処置で、副鼻腔と呼ばれる鼻の奥の部位を直接洗います。処置に際して、軽い痛みや違和感はあるのですが、症状の改善にはかなり有効です。
4. 下鼻甲介切除術
アレルギー性鼻炎の経過が長いケース、あるいは重症例では内服薬や点鼻薬を組み合わせても鼻閉(鼻づまり)が改善しないことがあります。炭酸ガスレーザーを用いて鼻粘膜を切除する方法や、特殊な薬液で鼻粘膜の表面を固める治療法など、いろいろな方法が各医療機関で行われています。当院では「高周波電気凝固」と呼ばれる方法で、強い浮腫を起こしている鼻粘膜を内部から焼いていく手術を行います。入院なしの日帰りで行い、手術時間は約30分程度です。
5.舌下免疫療法
スギ花粉症で重度の症状が出る方、内服薬を使うと眠気などの副作用が強く出る方、あるいは症状が非常に長く続く方には花粉症に対する「舌下免疫療法」を勧めています。スギ花粉のエキスをごく少量ずつ身体に取り込んで、身体の免疫を少しずつスギ花粉に慣らしていくもので、2年以上(推奨は3年以上)の経過で花粉症の症状が抑えられる有効な治療法です。最近ではダニに対する舌下免疫療法の薬も発売になりましたので、花粉症だけで無く通年性(季節に関係なく症状が出る)の鼻炎で、原因がダニという方々にも同様の治療を行えるようになっています。
のどの処置
1. 扁桃処置
口の中に見える”扁桃腺”が強い炎症を起こし、あるいは慢性的に炎症が続いて、表面が赤くなるだけで無く、「膿栓」と呼ばれる膿の固まりが溜まってしまうことがあります。これによる違和感や痛みがある場合は、吸引で取り除いたり、洗浄を行ったりします。
2. 喉頭ネブライザー
のどの炎症でも特に声帯の炎症が強いと嗄声(声がれ)を来します。内服治療が主体となりますが、のどに直接薬を吸入することで炎症をより早く和らげることができます。通院が可能であれば週に2,3回ネブライザーによる吸入を行うのが理想です。
その他の処置や手術
1. 鼻骨骨折整復術
スポーツの練習や試合、あるいはケンカなどで顔面を強く打撲した際に、鼻の根元にある「鼻骨」が折れてしまうことがあります。X線(レントゲン)検査で明らかな骨折を認めた場合は、局所麻酔下に整復術を行います。ただし、骨折により外鼻の変形や変異が顕著な場合、骨折が2ヶ所以上ある時はCT検査を行って上で全身麻酔での治療が必要になります。その場合は提携先の医療機関を紹介します。
2. 先天性耳瘻管(耳瘻孔)に対する処置
約100人に一人の割合で、耳の皮膚に耳瘻孔と呼ばれる小さな穴が見つかります。症状が無いか、痒みがある程度であれば基本的にはそのままにしておいて良いものですが、細菌感染を起こして強く腫れることがあります。炎症が強く痛みや発熱を伴う場合は、外来にて腫れている部位を穿刺又は切開して排膿(膿を出す)処置を行います。また耳瘻孔の炎症を繰り返す場合は手術が必要になることもあり、手術が可能な医療機関を紹介します。
3. 唾液腺の小手術
唾液を作る袋を唾液腺と呼び、大きいものは両耳の下にある「耳下腺」で、あごの下に「顎下腺」、その他口を取り囲むように多数存在します。胆石や腎臓の結石のように唾液腺にも「唾石」と呼ばれる石ができてしまうことがあります。唾液腺の内部にできてしまったものは全身麻酔で摘出する必要がありますが、ごく小さなものは口の中から摘出可能なケースもあります。少量の麻酔や切開範囲で済むようなケースは当院で対応します。
4. 補聴器相談
補聴器は医療機器であり、購入にあたっては医師の診察と診断が必要です。当院は日本耳鼻咽喉科学会が定める「補聴器相談医」が常勤する施設として、高齢者のみならず様々な難聴に対する補聴器相談を受け付けています。実際には耳垢や中耳炎による難聴が隠れていることもありますし、きちんとした診察の上で聴力検査を行い、その上で御本人と相談しながら補聴器装用について検査などを進めていきます。当院では毎週火曜日と隔週の金曜日に補聴器専門店から専門のスタッフに来てもらっており、院内で補聴器のフィッティングを行うことが出来ます。