花粉症に対するステロイド注射について
スギ花粉飛散のピークを迎えており、症状が強く出ている患者さんも多くなっています。その中で、重症の花粉症の患者さんから「こちらではステロイド注射をしていないですか?」と聞かれることがあります。おそらく“1回の注射で長く効く自費の花粉症治療”という名目で行われているステロイドの筋肉注射のことと思われます。「ケナコルトA」という薬剤を筋肉注射することで1,2ヶ月間花粉症が抑えられるとされ、一時期耳鼻科以外の医療機関で少なからず行われていたことがあります。しかし日本のガイドラインでも、海外のガイドラインでも、ステロイド筋肉注射を花粉症に使用することを一般に推奨していません。効果が高い反面、使える患者さんが限られていること、また重大な副作用の報告があるからです。ステロイド薬は全身の細胞に影響を与えるため、使用する際は副作用のリスクが避けられません。副作用が重症な場合、感染症の誘発・骨粗しょう症・消化性潰瘍・血栓症など生活に支障がでる可能性もあります。何と言っても注射で使う量は一般的に内服薬で使う用量の5〜10倍です。すなわち、『1回の注射で長く効く自費の花粉症治療』とは、『手軽に長く効く』のではなく、『1回の量がきわめて多量で後戻りができにくい』治療ということです。現在の耳鼻科での花粉症(アレルギー性鼻炎)診療ではこの注射治療は行われません。
花粉症の治療には通常の内服薬+局所剤の投与の他に、舌下免疫療法や、新しい注射薬の治療法もあります。2019年より、オマリズマブ(商品名ゾレア)という薬が、12歳以上のひどいスギ花粉症に対して保険適用となりました。事前の血液検査が必要、または薬価が高い、皮下注射のため痛みがある、といった問題はありますが、ステロイド筋肉注射よりもずっと安全性が高い薬剤です。当院では耳鼻科のガイドラインに沿った安全性の高い治療法をお勧めします。重症の方は診察の際にご相談ください。